Reports レポート

ニフティクリエイティブデザイン部の部員が参加した、「セミナー」や「展示会」のレポートです。

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担当- 柳沼 志帆

日付- 2011年01月31日

「是枝裕和×ジュリエット・ビノシュ 劇的3時間SHOW」レポート

こんにちは、やぎぬまです。

毎年恒例の日本国際コンテンツフェスティバルの3時間トークショーに行ってきました。 今年は、映画監督を中心にコンテンツの造り方や、表現についてのトークが中心だとか。
『誰も知らない』『空気人形』の是枝監督と『ポンヌフの恋人』『トリコロール・青の愛』などフランスを代表する女優ジュリエット・ビノシュの回です。

話の中心は、
■俳優のあり方について。演技について。表現について。
■ディレクター(監督)としての考え方。ディレクションの撮り方。
といった感じですすめられました。映画とWEBとまったく別の業種ではありますが、いろいろなスタッフと関わってひとつの作品を 作り上げる手法や、ディレクションのとりかた、考え方など参考になる部分も多かったです。

以下、3時間と長時間だったので、内容をかいつまんで記載します。


■出演する映画を選ぶ基準、俳優としての考え方、表現について

幸運なことに、自分で出演する作品を選べる立場にいるので、出たい映画に出演することになるが、それには脚本を読んで興味を持ったり、印象であったり。基準というのは特になく好奇心や、本能で選択している。女優は、監督あってのものだと思う。
(出演する)映画では、毎回その与えられた役なり、物語 に没頭し、自分を投影させる。(『汚れた血』(カラックス)過去の作品のシーンをみながら、即興について聞かれ)演技での即興は、そんなない。監督が、なにを要求しているか、役柄がどうであるか…『汚れた血』のときには、監督がたぶん自分のことを気に入ってなかった。あのシーン(自分の前髪に息を吹きかけてあげる仕草)のときから、その関係が変化した。 すばらしい監督は、演技指導とかされなくても、そこにいるだけでいい。存在感だけで映画が成立すると思っている。
時に作品によっては細かい演技指導をつけられる場合もあり、例えば『ショコラ』のラスト付近で、生き別れた娘と再会するシーンで、抱き合って、転げまわって喜びを表現することを提案したが「その必要はない」といわれた。最終的に、監督のいうとおりの演技が正しかったと感じた。

また、共産圏の監督 と、仕事を一緒にすることがあるが、彼らはワンテイクで作品を仕上げようとする。「もっとできるから、もう一度やらせて欲しい」といっても「このままでいい」といわれる。もちろん物資的に予算というのもあるかも知れないけど、それ以上に引き算の美学というのが存在していると思う。演技を足していくというよりか、削る。削ることで、より効果的な映像表現ができる。足せばいいというものではない。


■ディレクター(監督)としての考え方

撮影の際に俳優の個性を活かして、セリフを変えたり、衣装を決めたりするようだが、映画を自分の意のままにしたい、支配欲はないのか? という質問について(客席からの質問)。

大勢のスタッフやキャストで関わる場合が多く、今はそちらの方法論(周りに任せる)を尊重している。当然エゴとして、映画を自分のものにしたい、 思い通りにすべてやりたいという気持ちがないわけではないが、今のところは、それぞれの担当者にある程度判断をまかせてディレクションをしている。みんなでつくりあげるほうが今現在は製作がうまくいっていると思うから(今は、ということを多用しているのは、自分にまだ映画監督としてのキャリアが足りないと考えているからで、将来的に変わるかもしれない)。俳優へアプローチ(個性を活かす方法)もそうだが『空気人形』の時には、ちょっと誤算があった。自分としては、ファンタジーとして撮りたかったけど、俳優の演技が上手すぎて、ファンタジーになり得ず、リアル感がこぼれてしまった。これは誤算だった。


■子役の演出コントロールについて

いわゆる、子役を使う際に演技指導をどうやってつけているのか? たいてい、子役をつかうと子役らしい子役(こまっしゃくれた)になるのに、映画をみる限り、とても自然な子どもの姿を捉えているように見える。なにかコツがあるのか?(ジュリエットから、是枝監督への質問)

子どもと撮影する機会が少なくないのだが、心かげているところは、演じる役者に対していつも「尊敬の念で接する」ということ。
それが、年少の子役であっても、相手を尊敬することを忘れない。キャスティングした役者によって、必ず原稿に手をいれるようにしている。
撮影以外での時間(食事とか、休憩時間とか)でのコミュニケーションで、口癖、服装、しぐさなどを元にセリフの言い回しをかえたり、衣装を一緒に買いに行ったりする(あるいは、私服を持ってきてもらってその中から選ぶ)。俳優とコミュニケートすることで学ぶことが多い。個性が演出に反映されるから自然に見えるのではないか。


【おまけ】

・ジュリエット・ビノシュの好きな日本の監督は(是枝監督以外では)黒沢清。なるほど。ハリウッド映画のオーファーを受けないのは、自分自身をコントロールできる場に身を置くことができなくなるから、だそうです。ちなみに、スピルバーグから「インディ・ジョーンズ3」「ジェラシック・パーク」「シンドラーのリスト」などなど、出演オーファーがあったらしい(というか、シンドラーは ともかく、ジェラシック・パークに出演依頼って・・・)。

・ジョニー・デップのスペシャルな話。
『ショコラ』(2000年)で競演した、ジョニー・デップの変な演技集中方法。
ジョニー・デップは、現場で、いつでも耳にワイヤレスのイヤホンを付けて音楽を聴き続けている。彼専用の音楽スタッフ(DJ?)がいて、胸元のマイクから「交響曲の3番、かけて!」とかスタッフに指示を出して演技をしているらしい。
誰 にも関わらずに無音の場所で集中したいジュリエットにしてみたら衝撃だったのが、ジョニー・デップに「キミもやってみるといいよ!」といわれたので、「ものはためしにやってみたが頭がごちゃごちゃになってムリ!」と思った。とのこと。びっくりしたのは、これがリハーサルだけでなく、本番でもその調子とのこと。て、ことは、ジャック・スパロウも音楽聴きながらの演技なのか(驚)!!


【感想】

会場の参加者は、学生風半分、社会人半分といったところ。社会人の年齢層が高いのがポイント。大人の人らは、ジュリエットのファン、学生風は、たぶん是枝監督のファンとみた。 ジュリエット・ビノシュの佇まいというか存在感が圧倒的。イノセントでキュートなイメージだったりするが(汚れた血とかのイメージ)、大御所オーラ全開。年齢より10歳ぐらい年上にみえた。母親が演出家だったりする部分も関係しているのか、俳優という自分をディレクションする能力や方法論を確立していて確固たるものがある感じ。もっと本能系だと思っていたので意外だった。
是枝監督の話は、ディレクターのあり方として、今風なのではないかと感じた。自らの個性押しというよりかは、相手の個性をもって自分の作品にまとめる手法。先の「監督経験がまだまだ浅いので」と 自ら感じているために、ほかのスタッフに任せる方法を執っているようだが、これはWEBディレクターとしても同じではないかと共感した。個人的には、圧倒的な個性押しで撮った作品を見てみたいと思うのだが…。

2011年1月28日 青山スパイラルホール
劇的3時間SHOW 是枝裕和×ジュリエット・ビノシュ