Reports レポート

ニフティクリエイティブデザイン部の部員が参加した、「セミナー」や「展示会」のレポートです。

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担当- 赤池 智美

日付- 2012年07月09日

【ぴよぴよ通信第7回】 トーマス・デマンド展に行ってきた

ぴよぴよ通信
ひよこデザイナー2人が日々勉強しているデザインのこと、展示のレポートなどをお届けするレポートです。


今回は東京都現代美術館で開催されている
「トーマス・デマンド展」に行ってきたので、そのレポートをお届けします!

【目次】
■トーマス・デマンド展概要
■展示の内容と感想
■まとめ

■トーマス・デマンド展概要

トーマス・デマンド(1964年生まれ)は、被写体となる状況を自ら制作して撮影する構成写真で
知られる、ドイツ現代美術界を代表する作家の一人です。
デマンドは主に政治的、社会的事件が起きた現場の風景を、厚紙で精巧に再現し、
それを撮影します。
彼は彫刻家としてキャリアを開始しますが、紙で制作する保存困難な作品を記録するために
写真に取り組み始めます。
1993年に写真作家に転向し、写真を撮影するために紙製作品を制作するようになります。

今回は日本初の美術館での個展ということもあり、会場は思った以上ににぎわっていました。
ドイツは写真美術が盛んで、トーマスデマンドも現代写真の第一人者です。

展示は非常に大きくプリントされた写真で構成されています。
1.5×3mくらいの写真が展示されていました。


■展示の内容と感想

さきほども書きましたが、デマンド氏の写真は、風景を一瞬本物かと
見間違うほど精巧な「紙」で構成した空間を撮ったものです。

ぱっと見、誰もいない部屋や洞窟がただ撮られた写真。光も忠実に再現されます。
しかし、よく見ると異質。薄い紙で作られた世界だと気付きます。

写真は、本来忠実に現実を写し取るものですが、
今回撮影された空間はすべて再現された空間です。
がらんとしていて、何かぺらぺらとした異様な空間。思わず細部まで目が泳ぎ、
見ているほうが妙な緊張感に包まれます。
デマンド氏の撮った紙たちは写真そのもののスタイルに疑問を投げかけてきます。

デマンド氏の撮影スタイル自体が「写真」という存在そのものに対しての意識を起こす
芸術なのですが、今回私が気になったのは最近になって多く制作され始めた
歴史的事件が起こった場所を構築して撮影した写真たちでした。

イタリアのマフィアの首領、ミケーレ・ザガリアが逮捕された地下室。
太平洋航海中に大嵐に襲われた豪華客船パシフィック・サン号の客室。
そして、福島第一原発の制御室。

このような事件が起こった場所は、実際私たちは立ち会うことができません。
デマンド氏はその場所を写真などの資料をもとに再構築し、撮影後は破壊します。
その構築の過程を考えると、写真の異質感がじりじりと迫ってくるような気がしたのです。

ニュースでしか見ることのない現場。その場を自分の手で構築してみる。
情報でしか得られない体験を、自分のものとして吸収できない現代のもどかしさというか
世界と人との距離のようなものを私は感じました。
特に、原発の制御室。遠くで起こった事故、そして封鎖された空間。
しかしそこから放たれる放射能は私たちの生活に確実に迫ってきています。
その見えない事故現場を自分の手で構成して撮影することには非常に意味があるように感じました。


■まとめ

今回久しぶりに写真の展示を見に行ったのですが、やはり写真って面白いなあと感じました。
日々のニュースや情報の多くは写真によって伝えられます。
その写真がアートになりえる。そして様々な問題喚起をしてくれます。

特に今回は現代の問題と向き合った作品が存在感を放っていました。
今の現実と作者が向き合った結果生まれた作品は非常に強く感じました。

私も今の現実に向き合ったその結果を形にしないと、作家とは呼ばれないなあ…と
もの作りをする上での今の姿勢を考えさせられました。

【参考サイト】
アートフォト アーティストガイド「トーマス・ディマンド(Thomas Demand)プロフィール」