Reports レポート

ニフティクリエイティブデザイン部の部員が参加した、「セミナー」や「展示会」のレポートです。

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日付- 2012年10月09日

【ぴよぴよ通信第16回】ナガオカケンメイ氏のトークショーに行ってきた

ぴよぴよ通信
ひよこデザイナー2人が日々勉強しているデザインのこと、展示のレポートなどをお届けするレポートです。


こんにちは!

今回は、9月2日に青山ブックセンターで行われていた、
d design travel 編集長ナガオカケンメイ新刊『東京号』発売記念トーク&スライドショー」についてのレポートです!

【目次】
■「d design travel」のコンセプト
■トークショー内レポート
■民藝館について


■「d design travel」のコンセプト

ロングライフデザインの視点から、
その土地だけの魅力を47都道府県ごとに紹介するトラベルガイド「d design travel」。
ナガオカケンメイさんが編集長となり、
現在47都道府県中8つの地域
(北海道、鹿児島、大阪、長野、静岡、栃木、山梨、東京)が販売されています。
当日のトークショーでは
東京号出版にあたる編集部の裏側を聞くことができました。
進行はナガオカケンメイさんと編集部の男性1人が、編集当時を振り返る形で進められていきました。


■トークショー内レポート

以下、トークショー内での
ナガオカさんの会話の一部を抜粋してご紹介します。

・このガイドのターゲット
ターゲットは特にない。
自分たちが東京という街の中で、気になる「モノ」や「こと」をまとめてみる。
もしこの本が、作ってみたけど駄目だったとしてもそれはそれでOK。
チャレンジすることに意義がある。

・いわゆる「一般的」な情報誌との違い
普通の情報誌は、100%客観的情報をのせることに価値がある。(入場料、営業日、地図など)
でもd design travelは、
自分たちの「好き」「感動」からガイドブックを作ることに意味がある。
僕らは掲載する内容に対して、
必ず自費で利用して、泊まって、食事をして、買って確かめて…
実体験に基づく感動を、自分の言葉を使って本音で書いている。

・ライター言葉禁止
「ライター言葉」という制限を決めた。
例えば「~のような雰囲気を醸し出している」とか「人の温かさを感じる場所だ」など。
 ※「ライター言葉」とはナガオカさんたち編集部の造語である。
   要約すると「その言葉を使うことで、いわゆるガイド本の体裁が成立する言葉」のこと。

ライター言葉を使ってしまうと、本当に感動したことを伝えきれなくなってしまう。
自分の言葉をちゃんと持っている人たちが、人を感動させられる。
意図的に自分たちの言葉を見つけて、伝えていかなくてはならない。

上記のような裏話を聞くことができました。


■民藝館について

トークショーの中で私が気になったのは「民藝館」についての話です。
「d design travel」東京版の一番最初に紹介されているのは、
最近私が気になっている「民藝館」の紹介から始まっています。

トーク中、
「民藝館に行くまでは、正直行く気が全くしなかったんだけど、
 実際に行ってみたらすごく良かったんだよ」
という話がありました。

そもそも「民藝」とは、
有名デザイナーが有名ブランドを立ち上げて、
高価な値打ちが与えられた崇高な作品ではなく、
私たちが惜しげもなく普段使いする、
ブランド名もデザイナーも明らかにならないような
食器や道具に対して美を見出そうとする思想です。
(私はこのように解釈しています。)


民藝についての考察については過去にもいくつかレポートを記載しているので
よろしければぜひご覧ください。

【ぴよぴよ通信第13回】 「日本民藝館」に行ってきた
【ぴよぴよ通信第15回】「民藝とは何か」を読んで

トークショー最後の質問コーナーで質問してみました。
「民藝館に行く前はなぜ民藝に対して嫌な感情を抱いていて、
民藝館に行った後には良い印象を感じたのですか?」

ナガオカさんは以下のように答えました。

「民藝館に行くまで民藝が嫌だった理由は、
そもそも他人が提唱した民藝という思想運動に参加するのが嫌だった。
しかし実際民藝館に行ってみたら、思いの外なんだか良い場所だった。

そして今、民藝館の館長に、プロダクトデザインの巨匠であり、
グッドデザイン賞審査委員長である深澤直人が館長として就任した。
これは今後のデザインに対して大きな影響を与える出来事である。

民藝さえもデザインと言ってしまう世の中に、デザインが変化してきている。
今まで固定概念を持ってデザインに向き合っていた人たちが太刀打ちできない世界。
プロダクトをもっと俯瞰した世界が、デザインの元が、民藝にはつまっている。

民藝館のショップには、
柳宗理のデザインしたステンレスボールが売られている。
このステンレスボールが商品として加わったとき、賛否両論が起こった。
ここに、これから先のデザインのヒントがある。」

この頂いた回答を元に、
私なりにデザインについて考えてみました。

戦後、モノのない時代、日本人は多くのモノを生み出すことが必要とされました。
この頃は単純に、
「足りないモノを生み出す」「使用用途に合ったモノを作る」という作業の中に、
多かれ少なかれ美を意識していくことに「デザイン」の必要性や存在意義があったのかもしれません。
そして時代の移ろいとともにモノは満ちていき、
いつしかモノに対して「付加価値」を与えることが、
デザインの役割になっていったのではないでしょうか。
(ブランドを立てた物販や、個人デザイナーの崇拝化など)
しかし「付加価値」をつけるデザインも、もうすでに飽和し、そして破綻し始めてきました。
付加価値だけが一人歩きしてしまい、
自分にとっての本当に良いモノを見る目がない人が、
多くなってしまった傾向があるように思います。

今回の「d design travel」の編集でもポイントとしていた、
「自分の目で見て、自分の言葉で、本当に感動したことを伝える」ということや、
民藝の思想にある、
「名もなき工芸品の中に美を見い出す」というような、
「自分だけの絶対的美意識」の「価値観の開拓」や「創造」「発信」が、
今後のデザインの使命として変化してくのではないか、
そんなことを考えさせられました。

最後にもうひとつ、ナガオカさんに質問してきました。

「今後民藝などの思想がデザインに入ってくるとなると、
 美に対する価値観や意識が、個人単位に委ねられる比重が非常に大きくなることになります。
 その中で私たちは、どう「美」を見つけ出していったらいいのでしょうか?」

ナガオカさんは、ほんのちょっと黙ってから、
「それはまだ僕も分からないから、民藝の本とか読んでみて」
と笑いながら言いました。
時間がなかった部分もあるのかもしれませんが、
私の感じたところでは、まだナガオカさんの中にも
返していただいた言葉の通り、本当にまだ明確な答えがなかったのように感じられました。

そもそも深澤直人さんの民藝館館長就任についても賛否両論が起こっている状況です。
偉大なデザイナーたちも、
これからの新しいデザインのあり方について模索中な今
デザイン業界全体が新しく生まれ変わろうといしている時代に突入している気がしてなりません。