Reports レポート

ニフティクリエイティブデザイン部の部員が参加した、「セミナー」や「展示会」のレポートです。

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日付- 2013年05月09日

【こっこ通信第3回】オルセー美術館訪問レポート

こっこ通信

こっこデザイナー2人が日々勉強しているデザインのこと、
展示のレポートなどをお届けするレポートです。

2011年にリニューアルオープンした、オルセー美術館に行ってきました。
今回はオルセー美術館についてご紹介します。


■ オルセー美術館の歴史

オルセー美術館の建物は、
もともと1900年のパリ万国博覧会開催に合わせてオルレアン鉄道によって建設された、
オルセー駅の鉄道駅舎兼ホテルでした。
その後、この建物はさまざまな用途に用いられ、一時は取り壊しの話もありましたが、
1970年代からフランス政府によって保存活用策が検討され始め、
イタリアの女性建築家ガエ・アウレンティの改修により19世紀美術を展示する美術館として
生まれ変わることとなりました。こうして1986年、オルセー美術館が開館したのです。
今回のリニューアルの大きな目的の一つは、当時の芸術をよりわかりやすく
一貫性のある流れで展示することでした。
そして、改装工事の要となった5階の印象派のギャラリーだけでなく、
企画展示室、装飾美術を集めた「パヴィヨン・アモン」、
そして大時計裏のカフェの全面リニューアルなどが、新生オルセーとして生まれ変わることとなりました。

■ リニューアルのポイント2つ

リニューアル以前のオルセー美術館では、
白い大理石の展示室に自然光が差し込む空間中に絵画が飾られていました。
ところが、ガラス天井から注ぐ日の光が床面に反射して絵に影をおとし、
絵がくすんで見えるという現象がおこってしまいました。そこで今回の改修工事に合わせ、
絵の魅力を最大限に引き出すために、壁の色と天井を大幅に変更することになりました。

【壁の色】
明るい色使いの印象派の絵画に最もふさわしい壁色はどんなものか50色以上検討されました。
1年近い試行錯誤の上、美術館5階、メインフロアである印象派絵画が並ぶ壁の色は、
青みがかった濃いグレーに決まりました。
ムーラン・ド・ラ・ギャレット(ルノワール)の絵を細分化すると、
ピンクと黄色と青が目立ちます。
ピンクや黄色は日差しを、青は陰を表現することに多く用いられていました。
これらの色は、ルノワールに限らず、印象派たちがよく使った色であり、
これらの色を一番際立たせる壁色が青みがかった濃いグレーだったのです。

【天井】
差し込む光の変化を感じられるような天井を目指しました。
天井ガラスに特殊なフィルムをはり、自然光を80パーセントカット、
さらにその下にあるステンレスのブラインドが、光の捉え方を調整しています。
絵画は、朝は青みがかって見え、日中は絵の色味が引き立ち、夕方は柔らかな光につつまれる、
というように一日を通して、同じ絵画の中にも変化を感じさせられます。
人工照明だけだとほかの美術館と差別化がされず、
改装前の自然光が100%だと明るすぎて絵がよく見えない…
そんな問題点を改善させ、絵画が引き立ち、
同時に日の光の移ろいも感じられる空間を実現させました。
オルセーと言えば日の光、印象派絵画を誇る美術館として、
最高の光を手に入れることとなりました。

■ 印象に残った絵画

「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」(ルノワール)

ルノワールは、木漏れ日を取り入れた作家として有名です。
オーギュストのように、スポットライトがあたったような、
まるで舞台の一場面を描いたような絵画が多かった当時、
光は「画家が描くもの」とされていました。
でもルノワールの絵の中では、木漏れ日の色や動き、移ろいが表現されています。
印象派の「自然の光こそ美しい」という宣言は、当時に絵画にとって、
そして当時の人々にとってとても革命的な出来事となったそうです。

絵をよくよく見てみると、人物の陰もが
木漏れ日を受けてまだら模様に描かれている点が非常に記憶に残りました。

■ 美術館に興味をもったきっかけ

そもそも、私が美術館の建築に興味をもったきっかけは、
日本の2つの美術館で出会った、モネの絵でした。

モネの絵との最も感動した出会いは、直島の地中美術館でした。
白い大理石のタイルの上を靴を脱いで進んでいくと、
自然光の下に広がる巨大なモネの睡蓮が存在します。
大理石の壁床、自然光、直島の空気…といった空間全体が、
モネの絵を、「モネ」という世論や評判を超えさせ、
「絵画」というカテゴリーもとっぱらい、
「とにかく恐ろしく美しいエネルギーをもったもの」として存在させているようでした。
鳥肌がたちました。

もう一つのモネとの出会いは、
有名デザイナーが建てたと名のある、とある美術館です。
所狭しと絵が並んだ真っ白な壁の前で、
真っ白な光のピンライトに煌煌と照らされ、
太い2本の鉄線にぶら下がれた睡蓮を見て、
なんだか絵が空間に殺されているような印象を受け、
個人的にとても衝撃的な経験となりました。

これら2つのモネとの出会い経験をして以来、
絵画そのものだけではなく、
絵画の魅力を受け入れながらも引き立てる美術館の建築やデザインに、
とても興味をもつようになりました。

オルセー美術館で出会ったモネたちは、
やはり発色が美しく、壁や光とも調和もとれているようで、
限られた空間の中でも彼の絵画の歴史やこだわりを十分に味わえました。

みなさんもぜひフランスに行く機会がありましたら、
素敵な美術館、オルセー美術館に足を運んでみてください。
そしてそのときは、名画ももちろんですが、
オルセー美術館の光の使い方や壁の色など、注目してみてください。